70年の時を超えて「杉田の熱力学」が大復活せり!:新版「熱力学新講」ついに完成!   

みなさん、こんにちは。

いや〜やっとこの1年ずっと人知れず戦前の日本語から現代日本語へとLaTex2eで打ち込んできた杉田元宜先生の第二冊目の本が、やはり太陽書房からのオンデマンド出版という形で完成した。

というわけで、それを一応ここにもメモしておこう。

ところで、私のことをよく知らない人は、私のこのブログが私の仕事になっているのだ、と思うだろうが、それは間違いだ。

私の本業は理論物理学であり、日々「生命の物理学的基礎」を探求しているのである。

もちろん、この場合の物理学という意味は、普通のその辺の大学の物理学者が意味する「唯物論的物理学」の意味よりはるかに広い。だから、「唯心論的物理学」をも含んでいる。

私は物理学に何らの制約もつけない。

物事には制約が付けばつくほど取り扱いやすくなり、問題が解きやすくなるが、そういう制約は人が課したものであって、現実はそういうものはないからである。

たとえば、ハバードモデルと限定すれば、もうその段階でできることは決まってしまう。

要するに、囲碁や将棋のように、モデルを限定した瞬間にルールが決まり、やれることは極端に定まってしまうのである。

つまり、1つのゲームに堕する。

物理学者はそれを近似ないしはモデル化と呼んだりするが、数学あるいは数式自体が一つのモデルなのである。

概念という概念そのものが一つのモデルなのである。


特に熱力学というようなこの自然の中でもっともありふれた現象を扱う学問では、こういう明確な把握が必須だが、なかなか何が自然現象で何が理論現象なのかあいまいになることが多く、それが初学者を非常に惑わせるのである。

それって、記述すべき自然現象のことなの?それとも、理論の結果のことなの?どっちよ?

というわけだ。

先のハバードモデルというのは、強磁性現象を扱うためにハバード(自殺で死去)が若い頃問題を極端に簡単化して作った理論モデル=おもちゃなのだが、これでも数学的に解けないから人気が出たのだが、仮にそれが解けたところで、本当の現象を理解したわけではにない。

あくまでモデルを理解したにすぎない。

が、この差があやふやになるのが昨今の理論物理学の傾向である。

数学モデルができたところで、それが現実ではない。

この杉田元宜博士の時代、1942年、ちょうど戦争中までの我が国の物理学者は、明確にこうした記述されるべき自然現象と記述すべき数学との区別が行われていたのである。

だから、昔の物理学者は数式そのものに陶酔するようなピグマリオン症のような病気には感染していなかった。

現実をいかに数式で記述するかであって、いかに気に入った数学で自然に当てはめるかではない。

そんな時代の熱力学の幻の教科書なのである。以下のものである。

--杉田の熱力学--新版 熱力学新講
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杉田元宜(すぎた・もとよし、1905年8月熊本県八代町生まれ)は東京帝大出身の理論物理学者である。戦前・戦中において熱力学および分子統計力学の研究を行った。特に不可逆変化の熱力学の定式化に関しては、西洋のオンサーガーやプリゴジンなどとは別に独自の研究を行っていた。その成果は『杉田の熱力学』と呼ばれた。

戦争末期以降、杉田は自らの熱力学を生物へ応用する分野に注目し、生命科学の理論的研究に従事する。戦後、日本生物物理学会の発足にあたり、その重要な役を担い、我が国の生物物理研究の国際化に寄与した。晩年はウィーナーのサイバネティックスおよびバイオニクスに集中し、多くの研究論文や著書を公表した。そうした論文の一つはカウフマンの『秩序の起源』にも引用されたが、残念ながら多くの論文が小林理研や一橋大学の論文集に日本語で公表されたため、国内外での知名度が失われる結果となった。しかし、世の流れに70年先んじたその重要性は近年急速に見直されつつある。

本書は、『不可逆変化の熱力学』に関する国内初の教科書である。


目次

第1章 物体の状態
1.1 平衡状態
1.2 状態変数
1.3 物体系の熱平衡
1.4 準静的変化
1.5 完全気体の状態方程式
1.6 気体の分子運動
1.7 Joule の実験およびJoule-Thomson 効果
1.8 実在気体の状態方程式
1.9 完全気体への補正
1.10 状態方程式一般
1 1.11 状態量の変化, 全微分

第2章 熱力学第一法則
2.1 熱の本質
2.2 気体の比熱
2.3 熱と内部エネルギー
2.4 完全気体と熱力学の第一法則
2.5 熱物質観と歴史
2.6 完全気体の比熱
2.7 完全気体のエントロピー
2.8 一般の状態変化
2.9 Carnot のサイクル
2.10 熱機関の歴史と発達
2.11 ポリトロピック変化(Polytropic Change)※
2.12 任意の状態変化および永久運動
2.13 数学的関係および分子論的解釈※

第3章 熱力学第二法則
3.1 Carnot の原理と第二種永久運動
3.2 熱力学の第二法則
3.3 気体の熱力学
3.4 van der Waals の式に従う気体
3.5 熱力学的温度の決め方
3.6 エントロピーの別の導き方※
3.7 熱力学的関係式.
3.8 Clausius の積分※
3.9 一般の物体系の熱力学※
3.10 弾性体の熱力学※
3.11 弾性体の断熱伸張※

第4章 不可逆変化
4.1 不可逆変化とエントロピー
4.2 摩擦および不可逆変化の取り扱い
4.3 有効エネルギーの損失※
4.4 一般の不可逆サイクルと換算熱量
4.5 熱電気の現象
4.6 Joule–Thomson 効果
4.7 圧縮性流体の運動
4.8 Bernoulliの式の一般化(摩擦のない場合)※
4.9 摩擦のある場合※

第5章 状態の変化, 蒸発
5.1 二相平衡
5.2 蒸発
5.3 等圧加圧
5.4 飽和蒸気の性質
5.5 臨界点
5.6 表面張力
5.7 曲面の蒸気圧と過飽和の現象
5.8 沸騰
5.9 混合気体
5.10 拡散および浸透, 混合気体のエントロピー
5.11 希薄溶液の性質
5.12 二相平衡の条件, 沸点上昇および氷点降下
5.13 化学的に均質でない物体系, 第一法則
5.14 第二法則の応用, 質量作用の法則, 親和力
5.15 親和力, Nernst の原理
5.16 平衡条件と熱力学的関数
5.17 相律(Phase Rule)

付録A 数学的取り扱いに関する注意
A.1 関数関係と近似式
A.2 微小変化の取り扱い
A.3 微分係数
A.4 極大および極小
A.5 二つの変数の関数
A.6 全微分
A.7 完全微分および線積分
A.8 陰関数の微分
A.9 変化の経路を考えた時の微分
A.10 変数の変換
A.11 Taylor の級数および同次関数, 極大・極小
A.12 微分方程式
A.13 状態方程式に関する注意

付録B 単位に関する注意
B.1 熱力学における単位
B.2 完全気体の状態方程式と熱力学の法則
B.3 熱力学における重要関係式
B.4 完全気体に関するもの
B.5 van der Waals の式に従う気体
B.6 蒸発に関するもの

付録C 補註

索引



よく人は私に聞く。どうして自分の教科書を書かないの?ってサ。

世に良い本がなければそれもするに違いないが、この世界には良い本は少なからず存在する。が、そういうものは往々にして絶版になっていたり、廃版になっていたり、古語で書かれていたりするわけだ。

ならば、自分の本でお茶を濁すことより、歴史的役割を果たした名著を復活させるほうが先だろう。

というわけで、ここに故杉田元宜博士の第二次世界大戦のさなかに病床に伏せながらまとめ上げたこの杉田の熱力学を世に復活さしめんとするものである。

ちょっと古文がかってしまったが、こういう文体をすべて現代の普通の口語的な平易な文体に変えたものである。

せいぜい初等微積分程度しかないから、高校生でも読むことができる。

ぜひ熱力学に拒否反応を示さずに、本物の熱力学を勉強していただきたいと思い、こうして1年以上の月日をこの著書にかけたのだった。

ところで、この本を大学の図書館で探してもないから、あったとしても経年劣化で紙がボロボロ。コピーでもしようものなら、ページが破壊されてしまいかねない。そういうレベルの本である。だから、アマゾンにも原本がないのだヨ。



俺もかなりの暇人ですナ。


いやはや、世も末ですナ。



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by kikidoblog2 | 2017-06-27 09:31 | 杉田元宜・生命理論

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