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「新版 過渡的現象の熱力学」ついに登場!:60年余の歳月を経て甦った幻の物理学書!   

地上の星 / 中島みゆき [公式]


みなさん、こんにちは。

いや〜〜、すばらしく気分爽快!

この春先に初めてその存在を知ってから、ここ数ヶ月にわたってずっと論文集め、論文読み、理論分析などを続けてきた天才理論物理学者、故杉田元宜博士の生前の第二番目の著作「過渡的現象の熱力学」の現代語訳がついに陽の目を見ることになった。

この本は、杉田博士により戦時中に書き始められ、終戦間近の病床の中で校正され、闇市時代のまっただ中の1950年に岩波書店から出版された。初版たったの2000部で出版された。当時の金額で1冊200円。

現代のシステムバイオロジー的観点華やかな時代に先立つこと70年。

わが国の超天才杉田元宜博士は、すでにシステムバイオロジーの土台を完成していたのである。

それも、カルノー、クラウジウス、ヘルムホルツ、トムソンの形作った古典熱力学を非平衡開放系である生命体、生物体の熱力学を完成するというビジョンの下にである。

杉田構想、杉田哲学の真髄こそ、この「過渡的現象の熱力学」にある。

というわけで、私ももうすぐ60歳になるわけだが、なんとしてもその前に本として陽の目を浴びさせようと心底努力した結果である。

残念ながら、初版2000部を出版した岩波書店ではこの本の再版や復刻の予定企画がないということで、いくつか有望そうな出版社を掛け合ったが、あまりこの本の重要性に気づいてはいただけなかった。

そこで、長年私の本を出版していただいている太陽書房からオンデマンド出版という形式でインターネット販売の形ではあるが、私が望む形の本という形式で刊行できることになった。

ところで、本を出版する際には著作権や翻訳権などが問題になる。杉田元宜博士は1990年にご逝去された。だから、著作権はアメリカで死後70年、日本では死後50年生きている。だから、この本は2040年まで著作権が切れない。だから、それまで待つか、親族に問い合わせて許可をもらうかのいずれかになる。

ところが、杉田博士の場合、お墓が多磨霊園にあるという情報だけがインターネットに記載されていた。ご家族やご親族がどこにいるかもわからない。著作権保持者がどこにいるかもわからない。

岩波書店や杉田博士が勤務された一橋大学の総務の人にもわからない。

どうしたら著作権や翻訳権を交渉できるのか?

はて?

というようなことをどういうかというと、岩波書店の担当者は
著作権の迷子というんですよ
と、うまい命名を教えてくれた。

そう、杉田元宜博士の場合、すべての著作が著作権の迷子となったのである。だから、博士の研究成果を再現、復刻できない。

というわけで、私は絶望的状況に陥ったのだが、そこに神の助け、仏様の加護か、埼玉のお寺さん奥様が私のその調査を助けてくれたのである。

こうして杉田元宜博士のたった一人の生きたご親族が青森県にいることがわかり、私が手紙を書いて、その返事として、すでに杉田元宜博士のご家族もすべてお亡くなりになったことがわかったのである。そして、その方から、この本の再版の許可をいただけたのである。

こうして、岩波書店にも許可をいただき、こうしてやっと陽の目を見ることが出来た。

商業音楽のCDを出すのと違って、科学書を出すというのは、ささやかな本であったとしてもこれほどまでに困難を極めるのである。以下の本である。
新版 過渡的現象の熱力学 ‐ 生物体の熱力学の構築に向けて ‐
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60年余の歳月を経て甦った幻の物理学書!

本書は我が国において戦前、戦中、戦後初期の理論物理学を代表した故・杉田元宜(すぎた・もとよし)博士の「過渡的現象の熱力学」の現代語訳である. この本は初版が昭和25(1950)年4月5日に岩波書店から刊行された. 当時のお金で200円.

杉田の時代は戦前戦中を経ているために, 昔の情報集めは非常に難しい.なぜなら, 我が国では太平洋戦争時における米軍の爆撃により, 東京,名古屋, 大阪などの数多くの主要都市が爆撃による火事で学校や図書館が消失し, その時に多くの文献もいっしょに消失したからである. したがって, 戦前の教科書の類は極めて限られ, 戦前の情報はほぼ手にはいらない. 実際, 本書を保有している大学図書館もわずかであった. 東では新潟大学図書館くらいしか保管していなかった.

私はドイツに住むユージン・スタリコフ(Jewgeni Starikow)博士と杉田元宜博士の過去の業績についてやり取りしていたのだが, その時, 杉田博士の著書「過渡的現象の熱力学」と「熱力学新講」の2冊ともに新潟大学図書館に存在することをお知らせしたところ, 彼が我々の共通の友人で同僚である新潟県に住む山田弘明博士に「過渡的現象の熱力学」を図書館から借りて中を見てもらえるように依頼していたようである. あとで山田博士から私も見せて頂いたのである.

この本は太平洋戦争中に書かれ終戦直後に出版された本であるので, 文章が旧漢字で書かれているために, 現代人の我々にはかなり読みづらい. そこで, 内容の重要性からみるとぜひとも読むべきものであるが, 本が希少であることや文体などから現代語に訳す必要があると考えられる. そんなわけで,私はこの本を現代語に直して出版することにしたのである. その際, 読みやすさのために現代的な表現に合わせて若干の言い回しや単語や物理用語等の改変および英単語の添付などことわりなく変えたところがあるがご了承していただきたい.

いざ本ができあがってみると, 私の個人的な再出版の話は霧散しかけてしまった. なぜなら杉田博士夫妻がご逝去されている今, 著作権の保持者であるご遺族がどこにおられるのか皆目見当がつかなかったからである. 私がインターネットで調べたところ, 杉田博士のお墓が多磨霊園にあることだけわかった. そこで私のブログに杉田博士の写真をご存知の方があったら知らせて欲しいと試しに出してみたところ, 埼玉県にある曹洞宗大谷山宝城寺の照井瑞子氏からたくさんの本(写真付き) や原著論文をお送りいただいたのである. その御礼の際に杉田博士のこの著作権保持者のことをお知らせしたところ, これまた大変親切にお寺まわりのネットワークや顧問弁護士の手を経てついに現存する最後のご親戚を見つけていただいたのである.

それが現在青森県三沢市にお住まいの本田セツ様であった. この本田様から実は杉田博士夫妻にはご子息の長男がお一人おありだったのだが, 残念にも2012年8月にご逝去され, 杉田夫妻の直接のご遺族は完全にいなくなったことをお教えいただいたのである. また杉田博士の数枚の貴重なご家族写真もいただいた. さらには杉田元宜博士の奥様がカナダ出身の日系カナダ人の小山Grace栄(Grace Sakae Oyama)様であったこと, そのご家族やご親戚が現在カナダに多数存在することをお教えいただいたのである. そこで本書を再出版してもよろしいかということをこの本田さんに確認したところ,まったく問題はないという了解をいただけたのである. こうして出版できる見込みが出来たのである.

(編者の序文より)


カバーの写真はそのご親族の方から貴重な写真コピーをいただいたものである。

ところで、科学書で著者の写真が表紙を飾ることはめずらしい。これは私個人の出版社への希望としてそうしていただいているものである。というのも、科学も書かれた数式や内容ばかりではなく、書いているその当人の存在をもっとアピールすべきであると思うからである。科学も生身の人間が死にものぐるいで思考して行っているものだからである。

生命の物理学的基礎論、生命の熱力学、非平衡開放系の熱力学に関心を持つ人は読んで欲しいものである。そして、この本を契機として、超天才杉田元宜博士のご研究を紐解いて欲しいものである。


杉田元宜博士に乾杯!



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by kikidoblog2 | 2016-08-21 12:15 | 普通のサイエンス

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