ドラマ「天才を育てた女房」を見たが?:1951年までのお話だった。おもしろいのはその後だぞ!1
2018年 02月 27日
父の言葉(My father's words)
日本人が櫻が好きなのは其の散り際が潔いからである。
(The reason why the Japanese people love Sakura is the way of the great grace moment when Sakura's flowers are scatteredly falling by the wind.)
−− 数学者 岡潔(Dr. Kiyoshi Oka, a Great Japanese mathematician)
数学者 岡潔思想研究会岡潔「創造の視座」:「西洋人は第二のこころがあるのを知らない」
みなさん、こんにちは。
さて、先週の金曜日、あの岡潔博士のドラマが放映された。
私はたしかカーリングを見ていたから、このドラマは録画して土曜日に見たのである。
「天才を育てた女房」:223ついに岡潔がドラマになる!?→奥さんから見た岡潔だって!?
天才を育てた女房
キャスト
天海祐希、数学者・岡潔の生涯をドラマ化で主演 佐々木蔵之介と11年ぶりの夫婦役
見た印象からすると、意外に力が入っていたドラマだった。
細かいところではかなりの省略や間違いもあったが、総じて数学者という人種や岡潔の人となりを描くという意味では成功していたのではなかろうか?
一番ちょっと違うな
というのは、秋月博士の描き方だっただろうか。
岡潔が「大域イデアル」の論文を持って行ったのは、奥さんではなかった。岡潔本人である。
その時、秋月は病床にあり、もう完全に数学者を止める決心をしていた。
農業でもしながら余生を送ろうと考えていたわけだ。
およそ二年前にここにメモしたが、
大学図書館の「除籍処分の嵐」:みすず書房の「わが師・わが友」まで除籍だった!?
わが師・わが友〈第1〉 (1967年)
わが師・わが友〈第2〉 (1967年)
この中に秋月博士の「わが師・わが友」が収録されている。
このことを上のメモの「おまけ」として以下のようにその部分を抜粋していたんですナ。
おまけ:
数学者の秋月康夫博士の一番最初の書き出しの節が「数学と岡君」であった。むろん、「岡君」とは岡潔博士のことである。
まず数学に行こうかどこに進もうか迷っていた頃、自分にも数学ができるかと秀才岡潔のところに聞きに行くと「まあ、やってみろよ」と励まされたという。それで数学者に順調に育った。その頃の学生に湯川秀樹とか朝永振一郎がいた。
戦時中の栄養不良から戦後病気になり、その療養生活でもはや数学はもう無理だと田畑を耕して百姓の真似事をしていると、奈良の山奥に引きこもったはずの岡潔が最近やっと仕上げたばかりの世紀の数学の大論文「不定域イデアルの概念(層の概念)」を持って突然やってきた。先祖の田畑を切り売りしながら数学に没頭していたが、もう金が尽きそうだからどこかに職をくれと相談に来たという。しかし、その頃は秋月博士の方も数学の自信を失っていたので、自分の姿を見て岡が言った
「数学をやれよ、もう一度やれよ。きっとやれるよ。一緒にやろうよ」
と励ましてくれたのである。
そして、食事療養で健康を回復し、自信がついてきた頃、ついに京大教授として雇われた。そしてその時に井草準一博士を招聘したという。この井草博士こそ「東大ノート」の先達であった。その見事なノートは比類を見ないという。そしてここから我が国の現代的な代数幾何学が誕生していった。
要するに、岡潔は自分もすごかったが、仲間にも優しく励まし、朝永湯川ばかりか、我が国の現代の代数幾何の生みの親でもあったわけだ。
岡潔がなければ、秋月もない。秋月がなければ、井草もない。井草もなければ、京都の松阪、永田、中野、西、小泉、松村、広中もない。また、東大の玉河、佐竹、志村、谷山、久我、名大の森川もなかったという。
この谷山や志村がいなければ、もちろんワイルズのフェルマー予想の解決もない。
つまり、岡潔がいなかったら、いまだにフェルマー予想は解けていなかったかもしれないのである。
この岡潔と秋月の話はだれかに小説にしてほしいナア。ドラマでもいいが。こういう良いドラマを映像にこそ残すべきなのだ。AKB48が何しようが世界にはまったく影響しない。
まあ、こういった話は当事者が書いたものだからこそ残る。それを若者が読んでこそなのである。そういうものを捨ててしまう。気が狂っているナ。
(前列左から2人目が秋月康夫。後列左から2人目が広中平祐。)
岡潔は「日本人が櫻が好きなのは其の散り際が潔いからである。」という父親の言葉から名付けられたのである。
潔さ。
これである。
だから、一度
「俺は数学者として生きる」
と心に決めたからには潔くそれに徹する。
これを「すみれはすみれ」だという話で例えたのである。
桜は桜。すみれはすみれ。数学者は数学者。物理学者は物理学者。
分相応にその人生に徹すればよろしい。
さて、ドラマを見た人なら分かるだろうだが、あくまでこのドラマは学士院賞受賞までの半生である。
つまり、1951年までのお話にすぎない。
岡潔
1951年(昭和26年) - 日本学士院賞。
ところで、この岡潔博士は1978年3月1日にご逝去された。ちょうどいまから40年前のことである。
この1951年から1978年までの27年間。ここが岡潔博士の本領発揮であった。
特に1960年代から1970年代の高度成長期の時代。この日本人が今の中国人のように国際化し始め、国際社会の中で自信を取り戻しつつ、急激に欧米化し傲慢になり始めていた時代、岡潔博士だけが、この日本社会の行く末を心配していたのである。
そして、何冊もの本を書いた。
著作[編集]
単著[編集]
『春宵十話』 毎日新聞社、1963年。
『春宵十話』 角川書店〈角川文庫〉、1969年。
『春宵十話』 毎日新聞社、1972年、改訂新版。
『春宵十話』 光文社〈光文社文庫〉、2006年10月。ISBN 4-334-74146-0。
『春宵十話』 角川学芸出版〈角川ソフィア文庫〉、2014年5月。ISBN 978-4-04-409464-5。
『風蘭』 講談社〈講談社現代新書〉、1964年。
『風蘭』 角川学芸出版〈角川ソフィア文庫〉、2016年2月。ISBN 978-4-04-400125-4。
『紫の火花』 朝日新聞社、1964年。
『春風夏雨』 毎日新聞社、1965年。
『春風夏雨』 角川書店〈角川文庫〉、1970年。
『春風夏雨』 毎日新聞社、1972年、改訂新版。
『春風夏雨』 角川学芸出版〈角川ソフィア文庫〉、2014年5月。ISBN 978-4-04-409465-2。
『月影』 講談社〈講談社現代新書〉、1966年。
『春の草 私の生い立ち』 日本経済新聞社、1966年。
『春の草 私の生い立ち』 日本経済新聞出版社〈日経ビジネス人文庫〉、2010年7月。ISBN 978-4-532-19549-6。 - 日本経済新聞社(1966年刊)の修正、加筆。
『春の雲』 講談社〈講談社現代新書〉、1967年。
『日本のこころ』 講談社〈思想との対話 2〉、1967年。
『日本のこころ』 講談社〈名著シリーズ〉、1968年。
『日本のこころ』 講談社〈講談社文庫〉、1971年。
『一葉舟』 読売新聞社、1968年。
『一葉舟』 角川書店〈角川文庫〉、1971年。
『一葉舟』 角川学芸出版〈角川ソフィア文庫〉、2016年3月。ISBN 978-4-04-400126-1。
『昭和への遺書 敗るるもまたよき国へ』 月刊ペン社、1968年。
『昭和への遺書 敗るるもまたよき国へ』 月刊ペン社、1975年、新装版。
『日本民族』 月刊ペン社、1968年。
『日本民族』 月刊ペン社、1975年、新装版。
『葦牙よ萠えあがれ』 心情圏、1969年。
『日本民族の危機 葦牙(あしかび)よ萌えあがれ!』 日新報道、2011年10月。ISBN 978-4-8174-0727-6。 上記の復刻。
『曙』 講談社〈講談社現代新書〉、1969年。
『神々の花園』 講談社〈講談社現代新書〉、1969年。
『岡潔集 第1巻』 学習研究社、1969年。 - 収録:春宵十話、宗教について、日本人と直観、日本的情緒、無差別智、私の受けた道義教育、絵画教育について、一番心配なこと、顔と動物性、三河島惨事と教育、義務教育私話、数学を志す人に、数学と芸術、音楽のこと、好きな芸術家、女性を描いた文学者、奈良の良さ、相撲・野球、新春放談、ある想像、中谷宇吉郎さんを思う、吉川英治さんのこと、わが師わが友、春の草(私の生い立ち)、対話・全か無か(岡潔、石原慎太郎) 解題(保田与重郎) 年譜。
『岡潔集 第1巻』 学術出版会(発行)日本図書センター(発売)〈学術著作集ライブラリー〉、2008年11月。ISBN 978-4-284-10162-2。 - 学習研究社(昭和44年刊)の復刻。
『岡潔集 第2巻』 学習研究社、1969年。 - 収録:春風夏雨、片雲、女性と数学、若いおかあさまへのお願い、春の日、冬の日、二つのお願い、伊勢神宮参拝の感想、ある日の授業の回想、ふるさとを行く、科学と人間、夜明けを待つ、対話・昭和維新(松下幸之助、岡潔) 解題(保田与重郎)。
『岡潔集 第2巻』 学術出版会(発行)日本図書センター(発売)〈学術著作集ライブラリー〉、2008年11月。ISBN 978-4-284-10163-9。 - 学習研究社(昭和44年刊)の復刻。
『岡潔集 第3巻』 学習研究社、1969年。 - 収録:紫の火花、情緒、すみれの言葉、春の日射し、こころ、童心の世界、独創とは何か、新義務教育の是正について、創造性の教育、教育と研究の間、かぼちゃの生いたち、数学と大脳と赤ん坊、ロケットと女性美と古都、秋に思う、春の水音、わが座右の書、おかあさんがたに語る、人間のいのち、幼児と脳のはなし、生命の芽、対話・萌え騰るもの(司馬遼太郎、岡潔) 解題(保田与重郎)。
『岡潔集 第3巻』 学術出版会(発行)日本図書センター(発売)〈学術著作集ライブラリー〉、2008年11月。ISBN 978-4-284-10164-6。 - 学習研究社(昭和44年刊)の復刻。
『岡潔集 第4巻』 学習研究社、1969年。 - 収録:科学と仏教、教育を語る、梅日和、弁栄上人伝、人という不思議な生物、一葉舟、ラテン文化とともに、対話・人にほれる(小林茂、岡潔) 解題(保田与重郎)。
『岡潔集 第4巻』 学術出版会(発行) 日本図書センター(発売)〈学術著作集ライブラリー〉、2008年11月。ISBN 978-4-284-10165-3。 - 学習研究社(昭和44年刊)の復刻。
『岡潔集 第5巻』 学習研究社、1969年。 - 収録:講演集 こころと国語、私のみた『正法眼蔵』、教育論序説、二十世紀の奇蹟――光明主義、義務教育について、小我を超える――救いへの唯一の道、「情」というものについて、日本の教育への提言、日本民族のこころ、日本人は自己を見失っている、自己とは何かを『正法眼蔵』にきく、愛国、産業界に訴える、こころの世界、中谷治宇二郎君の思い出、対話・美へのいざない(井上靖、岡潔) 解題(保田与重郎)。
『岡潔集 第5巻』 学術出版会(発行)日本図書センター(発売)〈学術著作集ライブラリー〉、2008年11月。ISBN 978-4-284-10166-0。 - 学習研究社(昭和44年刊)の復刻。
『わが人生観 心といのち』 大和出版販売、1972年。
『心といのち』 大和出版〈わが人生観〉、1984年6月。ISBN 4-8047-3000-1。 - 新装版。解説:松永伍一。
『春雨の曲』第8稿、私家版、1978年7月。- 書き直した作品だが絶筆により未完となり、没後出版となった。
『春雨の曲』第7稿、私家版、1978年9月。- 完成形だが取り下げ、没後出版となった。金星の娘との出会い、生命と物質の関係、天衆の挨拶、第一の心である自然科学の顕在識(第一識から第六識)と西洋人に存在する潜在識(無明の入る第七識)、第二の心である東洋人に存在する悟り識(第八識から第十五識)、世間智を用いる自他の別、分別智を用いる時空の框、分別智と無差別智を用いる発見(インスピレーション型発見と梓弓型発見と情操・情緒型発見)、無差別智(大円鏡智・平等性智・妙観察智・成所作智)を用いる純粋直観(知的純粋直観と情的純粋直観と意的純粋直観)、九識論を上回る日本人に存在する第十識「真情」への到達(情が知や意より先であることの当然性)、過度だと早死にを招く抜き身を自浄其意で起こすことによる第十一識「時」への到達(道元の別時)、男女の別を懐かしさと喜びから生じる好みで超えることによる第十二識「主宰性」への到達(天照大神と天月読尊の見神)、第十三識「造化」、第十四識「帰趣」、第十五識「内外」等の最晩年の境地も描かれている[12]。
『岡潔講演集』 市民大学講座出版局〈エク・ディエス選書 3〉、1978年10月。 - 解説:松下正寿。
『岡潔 日本の心』 日本図書センター〈人間の記録 54〉、1997年12月。ISBN 4-8205-4297-4。
『岡潔先生二十年祭記念 聴雨録 - 師弟座談集 -』 真情会、1998年3月。
『情緒の教育』 燈影舎、2001年11月。ISBN 4-924520-44-6。
『情緒と創造』 講談社、2002年2月。ISBN 4-06-211173-X。
『日本の国という水槽の水の入れ替え方 憂国の随想集』 成甲書房、2004年4月。ISBN 4-88086-163-4。
岡潔、胡蘭成 『岡潔 / 胡蘭成』 新学社〈近代浪漫派文庫 37〉、2004年11月。ISBN 4-7868-0095-3。 - 合本。
『情緒と日本人』 PHP研究所、2008年1月。ISBN 978-4-569-69552-5。
『情緒と日本人』 PHP研究所〈PHP文庫〉、2015年4月。ISBN 978-4-569-76362-0。
『夜雨の声』 山折哲雄 編、角川学芸出版〈角川ソフィア文庫〉、2014年9月。ISBN 978-4-04-409470-6。
『岡潔 数学を志す人に』 平凡社〈STANDARD BOOKS〉、2015年12月。ISBN 4-582-53153-9。
共著[編集]
小林秀雄 『対話 人間の建設』 新潮社、1965年。
小林秀雄 『対話 人間の建設 新装版』 新潮社、1978年3月。
小林秀雄 『人間の建設』 新潮社〈新潮文庫〉、2010年3月。ISBN 978-4-10-100708-3。
林房雄 『心の対話』 日本ソノサービスセンター、1968年3月。
(つづく)

by kikidoblog2 | 2018-02-27 10:46 | 岡潔・数学・情緒