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リアル・グッド・ウィル・ハンティングが存在した!:ピッツ君、静かに歴史を作り静かに死す!?   

Good Will Hunting - A bittersweet ending


みなさん、こんにちは。

いや〜〜やはり古い本あるいは古い時代の人を研究しないとだめなようである。

ここ最近少しずつ便学(=大便する間に本を読む)している例のウィーナーの伝記:
情報時代の見えないヒーロー
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レジェンド:ノーバート・ウィーナーの父がハーバード大ユダヤ人教授第一号だった!
ノーバート・ウィーナー「情報時代の見えないヒーロー」:彼はAIの未来を見通していた!?
1935年ノーバート・ウィーナーは我が国に来ていた!:ウィーナー「東大より阪大の方がいいね!」


この本の中に実に面白い人物が登場する。

まさにマット・デーモンが演じた「グッド・ウィル・ハンティング」の天才数学少年のような数学者が実在したのである。

それが、ウォルター・ピッツ博士だったという。

ウォルター・ピッツ
Walter Pitts
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(右側の人)

ウォルター・ピッツ(Walter J. Pitts, 1923年4月23日 - 1969年5月14日)は、論理学者・数学者。
ミシガン州・デトロイト生まれ。シカゴ大学で論理学を学び、ジェローム・レトビンやウォーレン・マカロックに出会う。マサチューセッツ工科大学に勤務。
1943年、神経生理学者・外科医のウォーレン・マカロックと共に、形式ニューロンというモデルを考えた。


私はいわゆる脳科学の「脳理論」「脳モデル」「脳の数学モデル」という意味で非常に有名な「マカロック=ピッツ理論」というのは知っていたから、このピッツ博士はきっとMITを出た優秀な天才科学者だったのではないか、と思っていた。

しかしながら、どうやら現実はマット・デーモンの役よりずっと悲惨な人生だったらしい。

貧困のどツボ。学校に行く金もない。
父親はアル中で家庭内暴力。
家から逃げ出さいないと殺されてしまいかねない。

どうやらそんな家庭だった。

そしてついに13歳で家出。浮浪者になる。

身体も小さく、見るからに貧相で、恰好のいじめっ子の餌食。
毎日学校帰りの悪童共に追い回される日々。

そんな矢先のある日のこと、必死で逃げ延びた場所。

それが町の図書館だった。

それも数学や哲学の場所で、誰も来そうにない場所だった。

そこで隠れていると、目の前にあった本、それが

ラッセルとホワイトヘッドという2人の英国の天才哲学者が書いた
プリンキピア・マテマティカ
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だったらしい。

いつしか逃げ込む度にそこでその本を読む。そして内容にハマっていき、ついに1週間ほどで大作の3巻全部読みこなす。

「全部読みこなす」

この意味は、「全部記憶する」という意味である。

ピッツ君、いじめっ子に見つかって逃げ隠れては原論を読んで、それをいつしか頭の中におさめてしまったのだ。

ところが、13歳のピッツ君、その本の中にある重大なる間違いを発見。なんと著者の

バートランド・ラッセルに批評の手紙を書いた。


この時代、欧米の有名教授には世界中から手紙で論文やらアイデアやらが届く時代。ラマヌジャンはハーディーに手紙を送ったし、ボーズはアインシュタインに自分のボーズ凝縮のアイデアの手紙を送った。

だから、ラッセル教授も丁重にピッツ君に返事を書き、今度アメリカのシカゴ大学で講演するからぜひ聞きに来てと返事を書いたとか。

そして、ラッセル教授の講演を聞きにいくピッツ君。

ラッセル教授が自己紹介すると、なんと相手のピッツ君はまだ10台の子供だった。

天才はノーバート・ウィーナーだけかと思っていたら、また新たなる天才児の登場。

聞けば、14歳。

そこで、カルナップの下で勉強しろとラッセル教授がアドバイスする。

ところが、高校も出ていないし、行く金もない。中学すらろくに出ていない。なにせ浮浪児である。

ウィーナーのように早熟ですべての学校を飛び級で卒業したのでもない。

結局、適当に講義に出たり出なかったりの日々。

ピッツ君、ラッセルの弟子の秀才カルナップ教授の出たばかりの本に批評を書き込んで持っていった。そして、会うなりいきなり著者のカルナップ博士の言説に批判を加える。

そうこうしているうちに、同じ頃欧州から米国に渡米した
ラシェフスキー博士(Nicolas Rashevsky)
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の数理生物学に惹かれていく。


ところで、このラシェフスキー博士。たぶん今時はだれも知らないはずである。

ちょうど我が国の杉田元宜博士といっしょである。

我が国で杉田博士が終戦後に「生物物理学学会」を発足させ、その中に「生物理論」、すなわち「数理生物学」というものを生み出したのだが、いまや誰もそんなことは知らないというように、当時ヨーロッパから欧州の最新のアイデアを米国に持ち込み、欧州のベルタランフィ博士の「一般システム論」の創始に刺激され、それを生物理論というかたちで、数理生物学という分野があるはずだと一生懸命研究室を立ち上げたばかりの頃だった。

まさに飛ぶ鳥をも撃ち落とさんばかりの勢力の時だった。

いまでは、我が国は九州大学の巌佐庸博士がその筋のトップランナーであるが、そもそも巌佐博士がアメリカで学んだ先生が、みなこのラシェフスキーの育てた弟子たちだったというわけだ。

ラシェフスキーがアメリカに行くまでまだアメリカには「数理生物学」は存在しなかったのである。

しかし、今では欧米の研究者ですらそんなことも知らないし、ラシェフスキーの研究すら知らないのである。

さて、ピッツ君そのラシェフスキーの生物理論に興味を持つ。

そんなとき、科学概論の期末試験での伝説を作る。

◯✕式のテストが始まると、ピッツ君一番真ん前でいきなり硬貨でコイントスを始め、全部コイントスで結果を書いたふりをして、一番初めにテストの答案用紙を提出。そしてかっこよく退室。

ところが、成績はダントツでトップのほとんど満点だったという。

もちろん、これは演技だったが、全部記憶し理解していたのである。

ちなみに、ろくに中学高校も出ていない浮浪児ピッツ君に大学の履修計画を作成し、どの授業を受けたらいいか、それを作ったのがノーバート・ウィーナーだった。


そろそろとてつもない子がいるという噂が広まり、今のMITの脳科学部門の長になっている利根川進博士のように、MITの脳科学部門のトップに君臨し、自分の有名な論文もある
マカロック博士
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がその噂を知る。

ところが、ある日道でばったりマカロック教授がピッツ君と出会ってしまう。

立ち話しているうちに、マカロック教授はすぐに浮浪児のピッツ君の天才に気づく。

自分の家に住まないか?

と誘い、マカロック博士は子供を寝かしつけては、その後にピッツ君と研究の議論をする。

数週間すると、マカロック博士が何十年も解決できずにいた部分をピッツ君が解決。

そしてついに2人の共著の論文が誕生した。

それが冒頭にメモした「マカロック=ピッツ理論」だったのだと。
A logical calculus of the ideas immanent in nervous activity
(いまでは13746もの引用がある。)

What the Frog's Eye Tells the Frog's Brain

Anatomy and physiology of vision in the frog (Rana pipiens)


その頃のピッツ博士の姿がこれ。
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しかしながら、良かったのはこの時代までだったようだ。

その後、徐々にピッツ博士は幼少期のトラウマに苛まれて精神的に落ち込み、人嫌いになり、孤立化していく。

そして最終的には、アル中になり、肝硬変になって吐血して静かにこの世を去る。

享年46歳。


こうして今言うところの脳科学の基礎理論を生み出した天才浮浪児がこの世を去ったのである。

48年前の今頃の時期である。ご冥福をお祈りいたします。


ところで、今ではコンピュータを勉強した学生が、脳も電子計算機に似ているよね、というような感想を持つ。

実はそれは逆なのである。

フォン・ノイマンが脳理論のマカロック=ピッツ理論を勉強して、電子計算機のフォン・ノイマン型の原理にまとめたのである。


それにしてもこのピッツ博士の頭蓋骨。でかいですナ。目から頭頂までが高い。実はこれが知能の高さの証明である。

私はこのピッツ君の顔を見た瞬間、我が国のある人物の顔を思い出した。

そう。
大村益次郎
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である。我が国で最初に蒸気機関車を独自に作り出した天才。日本海軍を生み出した男である。

どう、東大や京大の人、この頭の大きさや頭の形を入試に加えるっていうのはどうでしょうか?

この大村益次郎もオランダ語、英語堪能だったとか。


頭に余裕がなければ、大学に入っても新知識が入る余地がない。


単純なイデオロギーに染まったら修正利かない。これでは困る。



いやはや、世も末ですナ。




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by kikidoblog2 | 2017-05-04 14:57 | ウィーナー・サイバネティクス

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