ダイソン先生が「リーマン予想と1次元準周期系が関係ある」といったわけ!?
2018年 12月 10日
相変わらずあまりにいろいろのことが起こりすぎてETの手も借りたいほどである。
今回はまずは数学の話だから、スルーでよろしくネ。
あの自由人ダイソン博士がどうしていま突然、リーマン予想の問題と1次元準周期系の問題が関係あると言い出したのか?これを読んでいたんですナ。やっと言わんとする意味が理解できたヨ。
その解説がこれだった。
鳥たちと蛙たちBirds and Frogs ー Freeman Dyson
ダイソンの妄想と俺の妄想:リーマン予想からABC予想まで。「数学は一つ」かも!?
グロタンディークやダイソンが言いたかったこと!?:俺「自己創造する代数多様体の研究」だろうナア!?
この「鳥たちと蛙たち」で言うところの「鳥たち」という比喩は、フライハイ(天高く飛ぶ)という意味で、数学者の中でも個々の分野を超えて、数学全体を鳥瞰図を描くことのできる大数学者のことを言っている。
一方、「蛙たち」という比喩は、「地べたに這いつくばる」という意味で、各分野の専門領域に生息して大きな研究を成し遂げる大数学者の意味である。
まあ、それ以外は、単なる虫かミミズというところか、あるいは、チリやゴミ。
ダイソンは自分は若い頃は鳥になりたかったが、どうやってもできず、自分はカエルにすぎなかったという。
そんなカエルのダイソン君が、アメリカに留学し、そこで量子物理へ転向する前、自分の博士論文に関係する研究をしていたころ、多くの若き数学者が一番最初に「リーマン予想」や「フェルマー予想」を解決してフィールズ賞をもらいたいというように研究しはじめるというように、自分もそうしたが、自分はあえなく頓挫し、分野を変えるべくアメリカに渡ったという話がある。
それから70年。
自分は量子物理の相対論的量子場理論やランダム行列の理論などでそれなりに有名な研究を行えるようになったが、その間にフェルマー予想はワイルズにより解決されたが、いまだにリーマン予想は解決されずに残っている。
自分が成し遂げたランダム行列の理論とリーマン予想の問題の深いつながりがあることがわかったが、いまだ解けないということは「何かが足りない」ということになる。
その「何か」をいま再考し直すと、それは自分が博士論文のころにお世話になっていた指導教官のロシア人のベシコビッチ教授の行っていた、1次元概周期問題の理論に何か関係がありそうだとわかった。
というより、実はその頃自分はその師匠の理論から推測して、もしリーマン予想が解けるとすれば、こんな感じではないかという一つの予想というかビジョンを持っていたのだが、その当時は実にあいまいとしたものであった。
だからいつしか忘れていたのだが、1984年ごろに物性物理学で準結晶(quasicrystals)という新しい物質が発見され、その理論もいくつか現れた。そうしてみると、準結晶のX線スペクトラムの特徴が実に興味深いものだった。
ところで、物質の原子配置を求める場合にX線解析ということを行う。これは、物質にX線を照射し、その反射をフィルムに写真撮影すると、その物質の構造に対応して、スポット状に点の集団があるパターンを作って現れる。そのスポットと強度(明るさ)を目安に逆にそれに対応する構造を求めるのである。

http://www.chem.ous.ac.jp/~gsakane/study/kiki/ccd.htm
強いスポットは周期性をあらわし、その波長に対応する周期配列の存在を暗示する。だから、スポットが2つ別々のところに現れると、それぞれに対応する2つの周期があることになる。
こういうふうにして、元の物質内のミクロの原子構造を推定できるのである。これがX線解析という手法である。タンパク質の構造解析も蛋白分子を結晶化させてX線解析してタンパク質の構造を決定してきたのである。下村博士の蛍光タンパク質もこうやって構造解析されたのである。
一方、音響のホワイトノイズ(白色雑音)や光の白色光のようなものは、無数の波長の音や光が混成して重ね合わされているものである。だから、光の場合はそれをプリズムで分光すると、虹色のパターンが分離できる。同様に音は機械でフーリエ分析すると、ホルマント構造という形で音のスペクトルが得られる。
こうしてみた場合、白色のものは、無周期の構造のない構造であることがわかった。
ソーラーパネルにつかわれるアモルファス半導体はこういう構造がランダムな半導体でできている。こういうランダムな構造の物質のX線解析を行うと、そのスペクトルはボヤ―とした連続的な光の帯で現れる。これがホワイトと呼ばれる理由である。

http://www.geocities.jp/satouniverse/glass.htm
この数学理論を完成させたのが、ノーバート・ウィーナーであり、ガウス分布の確率論、ブラウン運動の理論などが生み出されたのである。そして、最終的にはネルソンー保江邦夫の確率場の量子化理論、確率変分学へと繋がった。
というわけで、構造がランダムならX線スペクトルは連続的、周期構造ならX線スペクトルはスポット状(・状)とわかったわけだった。
そこに準結晶が現れると、それはそれらのどちらでもなかったのである。一見スポット状に現れるが、まるで夜空の星々と見たように、一部を拡大するとまたそこにさっき見たのと同じような構造が現れる。そしてそれは際限がない。つまり、スケール普遍性を持っているのである。

http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php
これは周期系が空間の並進方向に対称性(空間対称性)を持っているのに対し、準周期系は空間のスケールを変換する方向に対称性(スケール普遍性)を持っているというわけだ。
たとえば、3次元の準結晶の場合なら、そのスポットは黄金率τの整数倍の位置やそれに整数和をしてずれた場所、すなわち、mτ+nの場所に無数に現れるのである。
そこで、老人になったダイソン先生、若いお弟子さんにリーマンのζ関数のゼロ点のX線解析を行わせてみた。すると、驚くべきことに、そのスペクトルは、スポット状でありなおかつスケール普遍性を持っていたのであるという。しかもそのスペクトルの基調となる位置は、素数pのべき乗(p^n)の整数倍とその素数のlogであるlog pの整数倍の場所だけに現れたというのである。
スペクトルは連続的でもなければ、有限個のスポットでもない。そのどちらでもない。
つまり、おそらくもっとも複雑な準周期構造をしているにちがいない、というわけだ。
まあ、log pはpのゼロ乗の極限と見ることもできる。だから、pの分数乗の極限と見ることもできる。だから、基本的には、、素数pのべき乗(p^n)の整数倍とその位置を整数分だけずらした場所に出てくるということだろう。
まあ、とにかくこのお弟子さんの数値計算の結果は、若かりし日のダイソン博士が頭に描いたビジョンにかなり似ているということのようである。
なぜなら、ダイソン先生の先生のベシコビッチは、あのニールス・ボーアの弟のハンス・ボーアという数学者と二人で概周期系の理論の双璧となったからだった。
ところで、このニールス・ボーアの弟さんは有名なサッカー選手だった。その後ユダヤ人にありがちに学者の道に進み、数学者になった。
さて、そういうことのようですナ。ダイソン先生が1次元準周期系に関心を持った理由は。
ということは、p進数で理論(p-adic number theory)を作るだけでは、準周期系を理解することは不可能だということになる。なにかもっと斬新なアイデアが必要だということだろう。
いずれにせよ、頭の柔らかく集中力のある若い力が必須なことは間違いないだろう。
老兵は去るのみ、ですナ。
いやはや、世も末ですナ。

by kikidoblog2 | 2018-12-10 11:08 | 普通のサイエンス